渡辺研究室を志望する方へ

 渡辺研究室は,学部では東京理科大学理学部第一部応用数学科,大学院では東京理科大学理学研究科科学教育専攻数学コースに属する「教育工学」や「教授設計」,「数学教育」を研究フィールドとする研究室です.
 東京理科大学は「理学の普及を以て国運発展の基礎とする」という建学の精神のもと1881年の開学以来,たくさんの教師を輩出してきました.この建学の精神にある,「理学」とは,「真理の追究」として定義され,理学部では「実力主義」のもと数学,物理,化学の各分野の専門教育を行っています.一方,「教育」は,「真理の追究」だけでなく,学習者の様々なニーズにどのように応え,問題をどのように解決するかという,「工学」的な発想も必要になることがあります.私たちは,理学を教授する際に,どのように効果的,効率的なアプローチがあるかを工学的思考のもと考えています.
 所属学生の具体的な研究内容は,このページの研究業績などを参照してほしいと思いますが,実際に見て,話して,納得すると言うことや,どういった研究環境なのかを知ることも重要かと思っています.学生の研究テーマは,個人の興味関心によるものが大きいと思っていますし,その問題意識や学びたいことを優先したいと考えています.せっかく研究するのであれば,自分のやりたいことをやってほしいと思っています.そのための支援は惜しみません.
 学部の卒業研究(卒研と言います)では,応用数学科の学生の中で教職課程を履修している方を対象としています.大学院では,広く募集を行っています.大学院入試の種類や機会は,東京理科大学理学部数学系学科,理工学部数学系物理学系各学科からの学内専攻,現職の先生方,他大学の方からの一般選考など,年に数回あります.数学教育や教育自体をフィールドとして学習,研究をする方を歓迎します.興味を持たれた方は,ぜひ研究室に遊びに来てください.メールアドレスは,Profileを参照してください.



 

教育工学研究とは

 教育工学は,英語では"Educational Technology"と言います.ここで言う,Technologyは,日本では,テクノロジーというよりも,技術に近いものです.したがって,”教育技術学”と言っても良いでしょう.
 東京工業大学にいらした坂元昴先生は,著書である教育工学の原理と方法(1976)において,「教育におけるあらゆる名人芸を分析し,その秘密を明らかにし,分析された構成要素を工学的に究明して実践に移そうとする.そのれによって名人芸を万人のものとすると同時に,名人芸自体の改善,向上をねらうものである」としています.また比較的最近に刊行されたでは,教育工学事典(2000)では,「教育改善のための理論,方法,環境設定に関する研究開発を行い,実践に貢献する学際的な研究分野であり,教育の効果あるいは,効率を高めるための様々な工夫を具体的に実現し,成果を上げる技術を開発し,体系化する学である.」とあるだけでなく,さらに「テレビ,ビデオ,コンピュータ,マルチメディア,インターネットなどのメディアの教育利用研究ではない.」とも指摘されています.このように,「教育」をフィールドにした「実践」もしくは「良い例」を抽出し,問題点や課題を整理し,それを改善し,普及していく学術分野だと思うのが良さそうです.「教授(授業)方法」や「学習方法」自体や,それに関する書籍などは,大きく分けて2つあります.1つは,自身の成功体験を綴ったもの.もう1つは,その方法を科学的に検証したものです.教育工学では,主観を排し科学的に証明していくという意味で後者に帰属します.「工学」とは,広辞苑によると,「基礎学を工業生産に応用して生産力を向上させるための応用的科学技術の総称」ですから,問題や課題を改善するというニーズがある学問分野ではないでしょうかね.
 その教育工学研究の中でも,渡辺研究室はインストラクショナルデザインの研究をしています.インストラクション(授業)をデザイン(設計)するためのものです.デザイン(設計)は,理論やモデルを実体化することだと考えることができるでしょう.インストラクショナルデザイン(ID)とは教授・学習に関する理論やモデルを現実に稼働するものとして設計することにより,教授・学習を効果的・効率的・魅力的にするための手段や手法として捉えることができます.その手段・手法の開発と評価のためには,理論とモデル,設計,実践,評価を組み合わせた研究が必要です.また,それが適用されるフィールドとしては,初等中等教育,高等教育,人材育成,研修,生涯学習など,デザインされた教授学習が行われる機会すべてを含んでいます.以前,日本教育工学会論文誌で,インストラクショナルデザインの特集号が発刊されたことがありました.そのときのフォーカスは,下記の通りでした.

  • さまざまな ID モデルによる教授・学習の設計・実践・評価
  • さまざまな ID 的ツールを利用した設計・実践・評価
  • 動機づけ理論・学習理論を基礎にした設計・実践・評価
  • ゲームをベースにした設計・実践・評価
  • メディアや活動の組み合わせによる設計・実践・評価 e ラーニング,オンラインコースの設計・実践・評価
  • 授業・研修・講座・トレーニングにおける設計手法や評価手法 ID モデルの理論的考察
  • ID の研究的枠組みに関する考察

 このような研究をすることになります.しかし,一般的な教育工学の知見をただ実践するということではなく,研究としてどう扱っていくかと言うことになります.研究には新規性が求められます.ただ,モデルを適用した実践をやっても研究としては新規性が認められません.明確な,「問い」(Research Question:RQ)があり,それがどう,デザインに反映され,その結果はどうだったのか.有用性はあるのかなどが,必要になります.IDは,実践的な学問領域で,IDを学ぶと,IDをまとめてしまうことがありますが,それは(学修にはなるかもしれませんが,)研究にはなりません.しかし,科学的な根拠のない(自身の実践などの)ものなど,今までの研究知見を無視したものなども,研究とは言いがたいです.そうしたことを踏まえて,数学や理科などの専門分野,アクティブラー二ングなどの教育手法などと合わせて考えていく研究室です.

研究分野の関連書籍


 とは言っても,どんな分野だか,まず本でも読んでみたい.と言う方もいらっしゃると思います.以下は,教育工学(研究室)では,読んでほしいと思っている書籍です.訳本は,原著にチャレンジするのも良いと思います.

 
 授業設計(インストラクショナルデザイン)について,幅広く書かれています.学部生など,教育実習に行く前や研究についてディスカッションする前提となる知識になります.
 


 訳者の1人です.大学院の授業で使う教材です.特に第1章をきちんと読むと良いです.


 心理学,教育心理学に興味がある初学者におすすめ.この本から研究テーマの入口を見つける学生もいます.


 訳者の1人です.今後求められる学習とは何か,アクティブラーニングだけでいいのか.ということを考えています.


 アクティブラーニングの定義をしっかり知る.

研究室のルール

「渡辺研は厳しいらしい」と,いちおやんわりとは伝えていますが,ちゃんと支援するようにしています.ゼミの見学は自由です.前もって連絡をしてください.

ゼミ

 研究活動として,いわゆる研究ゼミと言われるいわゆるゼミと,論文ゼミ,文献ゼミ,統計ゼミなどの自主ゼミから構成されます.在籍学生の興味関心に合わせ内容を考えます.東京工業大学で開催中の研究会にも参加可能です.

  • 2019年度のゼミは
    • 研究ゼミ 月曜日 5:00pm-8:00pm
      • 2人が自身の研究について発表します
    • 文献ゼミ 金曜日 2:30pm-4:00pm
      • 2019年度前期は,「インストラクショナルデザインの原理」「認知心理学への招待」を輪講しています.
    • 論文ゼミ 水曜日 0:50pm-2:20pm
      • 毎回2人が,自身の研究と関係のある論文を選択して紹介します.


学会発表

 研究室では学会発表を推奨します.卒研では,国内発表1件,修士2年間では,国内発表1件,海外発表1件を最低目標に活動します.英語に自信のない人も,修士入学までに鍛えておきましょうね. 

研究室の生活

 研究室ではコアタイムなどは設けていません.学生は自分のペースで研究していきます.そのペースメーカーになるのが,研究ゼミとディスカッションです.学会などで,華やかに?完結した(もしくは完結しそうな?完結しているかのような?)研究の話を聞くことがありますが,研究は必ずきれいなものではないとは思っています.その過程には,汗と努力と知恵と工夫のような試行錯誤があります.研究ゼミでは皆で,「どうすれば,良くなるか」を話し合う場ですし,研究ディスカッションでは,僕も一緒に考えるというスタンスです.研究ディスカッションは,常に受け付けています.

Frequently Asked Questions よくある質問とその回答

 よくある質問と,その回答です.

Q1:渡辺研って何人いるんですか?

  • 2019年度は,1期生のM1(修士1年)が5人,B4が2人です.
  • 2020年度は,M2が5人,M1が4人,B4が8人です.
  • 2021年度は,Dが2人,M2が4人,M1が4人,B4が2人です.
    • これらとは別に,進学希望などの理由で,B4生の聴講生は2~3人が毎年います.

Q2:渡辺研はブラック研究室だと聞きましたが,本当ですか?

  • ブラックじゃないです.自身のペースを持って研究をしています.

Q3:研究テーマはどのように決めるんですか?

  • 研究テーマを教員が決めるということはありません.自分のやりたいテーマを考えていきましょう.配属が決まったら(大学院の場合は夏,卒研生の場合は12月くらい),ディスカッションをしながら,興味のある書籍などを読みながら絞っていく感じです.

Q4:渡辺研では,飲み会が多いと聞きました.本当ですか?

  • 非公式の飲み会や食事会は多いかもしれません.ですが,非公式ですから突発的に,院生室にいる人たちと…という感じで,絶対参加!というものではないです.行きたい人が行くだけですね.では,公式なものは,というと4月にキックオフパーティー,12月に忘年会,3月に修了パーティーとそんな感じです.個人的には,11月にThanksgiving Partyをして七面鳥を食べたいと思っています.

Q5:さっきの質問ですけど,本当にブラックじゃないんですか?

  • 気になってましたか?しつこいですね.確かに,研究室では,研究ゼミ,文献ゼミ,論文ゼミがあり,発表担当が重なってしまうと大変かもしれません.特に大学院生は,大変かもしれませんが,自分の研究テーマに密接に関係する分野の学びですから,自分のペースで楽しんでやってもらえればと思っています.そのためには,やりがいのある研究テーマを決めて,スケジュール管理などもしておいた方が良いですね.

Q6:渡辺研は外部との研究も多いと聞きました.本当ですか?

  • 他大学や企業との研究は多いです.2019年度は,北海道大学,公立はこだて未来大学,東北大学,東京工業大学,東京大学,津田塾大学,島根大学,熊本大学などの先生方や,コクヨ株式会社等などの企業と一緒に,プロジェクトをしています.

Q7:渡辺研に行きたいんですが,どうすればいいですか?

  • まずは,渡辺にアポイントをとりましょう.ゼミのある日であれば,ゼミも見学しましょう.理科大の学生は,学内選考制度もあります.学内選考に入れない理科大生,学外の学生,志望者は一般選考で受験が可能です.なるべく早めに連絡をしてください.

Q8:大学院科学教育専攻には行きたいんですが,数学がやりたいんです.

  • 数学の先生のところに行きましょう.佐古先生とか伊藤弘道先生とかいらっしゃいますよ.

Q9:渡辺研に行くメリットってなんですか?

  • これと言ってないかもしれませんが,僕はなるべく学生のそばにいるようにしています.研究について,いつでも相談できるようにしています.また,教育工学について,きちんと学べるような環境作り,機会を作るようにしています.

Q10:渡辺研に行くデメリットってなんですか?

  • 特にないですが,例えば,のほほんと過ごして,なんとなく修士を出たいという人にには….メリットがデメリットになるかもしれません.でも…そういう方は,そもそも大学院には来ないでしょ..

Q11:英語苦手です.どうすればいいですか?

  • 僕たちは,中学校,高校,大学と英語を学びました.で,苦手ならばきっと方法が会ってなかったのかもしれませんよ,違う方法で学んでみましょう.

Q12:渡辺研は拘束時間が長いと聞きました.本当ですか?

  • 確かに大学院では,ゼミは週3日ありますが,それは拘束とは違うかなと思っています.それぞれ単位が出ていますし.それ以上に,学びであったり,活動がありますし.特に,コアタイムなどは設けていないので,学生のペースで家で作業したり,研究室で作業したりと,自由にやっていますよ.

Q13:学部の卒研で渡辺研を志望しようかと思っています.週3日もゼミやるんですか?

  • 卒研の渡辺研としては,教員採用試験,就職活動を優先していただいて構いません.週3日ゼミをするわけではなく,研究ゼミと論文ゼミ,文献ゼミを自分たちの都合の良い日に設定してください.1日にまとめてもいいですし,違う日に設定していただいても構いません.上にも書いていますが,研究するのは自分のペースで進めてもらえば良いです.学部生には1人1人に大学院生をピアチューターをつけようと思っていますので,チューターと相談しながら進めてください.

Q14:結局どういう学生に来てほしいんですか?

  • 結局は,どこの研究室でも同じですが,「研究する」と言うことを知ってもらい,楽しんでもらいたいと思っています.楽しいことが一番です.その中でコミュニケーションを取りながら,楽しく過ごすことが人生も豊かになると思いますよ.